本を一冊書くときは、最初にペースを確認しています

仕事

この間「意外ですね」と知り合いの編集者さんに言われたのですが、私はブックライターとして原稿を書くときは、1日に何ページくらいのペースで書けばいいのかを算出し、さらにそのためには1日に何時間くらい必要なのかも割り出すようにしています。

意外ってことは、無計画タイプだと思われているのかな…汗

今回は、ブックライティングに限らず、ボリュームの大きな仕事に取り組む際に私がしている「ペースの把握」について書いていこうと思います。

 

ペースを把握しておくことのメリット

とりあえずどんどん書いていく!という感じでノリ重視の進め方をしていると、やる気が出ないとき、他の用事があって書く時間が取れないときに「どうしよう、書かなきゃいけないのに」と焦ります。また、休んでいる時も「まだ原稿が終わっていないのに休んだりして、間に合うのだろうか…」と気になってしまいます。

1日のノルマページ数とその所要時間の目安があれば、やる気が出ないときも「今日はノルマに対して半分しか書けなかったから、予備日に遅れを取り戻そう」とか、「昨日4ページ多めに書いたから、今日はノルマより少なくても大丈夫」という感じで全体の進捗を見渡しながら考えられます

また、全体の進捗をコントロールできれば、原稿が仕上がっていなくても休息を取ることに罪悪感はありません

 

ペースがわかるとやる気もわく

「人間はなぜ物事を先延ばしにしてしまうのか」という問いの答えの一つに、「怖いから」というものがあるそうです。

私は今でも、大型案件に取り組む前にぐずぐずしてしまうことがあります。それはだいたい、

  • どれだけ時間がかかるかわからないから、怖い
  • うまくできるかどうかわからなくて怖い

という感情を伴うものでした。わからないものは怖いのです。

でも、今回説明したように、最初にペースを掴んでいれば、上記のような心配をしてとりかかるのを先延ばしにすることはありません。どのくらいのペースで書けば締め切りに間に合うかわかるし、試しに何ページ分か書いてみることでその原稿の難度もわかるからです。

 

1日何ページ書く?

これは簡単ですね。総ページ数÷作業できる日数で算出できます。たとえば146ページ分の原稿を書くのに12日あるとすれば、1日12.1ページがノルマとなります。

ここで大切なのは、予備日と休日を必ずとっておくということ。締め切りまでに16日あるとしたら、私なら予備日として2日、休日として2日とっておき、実際に作業できる日数を12日と設定します(本当は休日があと1〜2日あるとベストかな)。

予備日は急に取材が入ったり、体調が悪かったりして計画通りに進められない日があったときに使って遅れを取り戻します。また、締め切り前最終日を予備日にしておけば、早めに提出しやすくなります。そして早めに提出すれば、発注者の印象もよくなります。

それから、予備日とは別に休日も確保します。毎日同じことばかりしていると疲れてしまうので、気分転換や休息は必要です。休日があるとメリハリがついて、作業日も頑張れるのです。

私はいつも、スケジュール帳にこの日は何ページから何ページまで書く、などノルマを書き込んでいます。また、書き終わったページは台割(本の設計図のようなもの)にマーカーで色を塗って、達成感を味わっています(笑)。

 

急ぎのときは?

もちろん急ぎの仕事なら予備日なし、休日なしで根を詰めて書きます。ただし、この状態が2週間くらい続くと私の場合は精神的にも肉体的にもキツくなってきます。その結果ひどい風邪を引いてしまったり、昼夜逆転してしまったりと、ろくなことがありませんので、1日のノルマを増やしてでも休養日を作っています。

予備日と休日を確保することで、ゆとりをもって進めることができます。

 

1日何時間書く?

この数字を出すためには、執筆ペースを掴む必要があります。

とりあえず何ページか書いてみて、原稿執筆にかかる時間をはかってみます。案件によって、所要時間は全然違います。内容の難度、資料の多い少ない、自分で資料を探す必要があるかどうか、1ページあたりの文字数など様々な要因で変わってくるんですよね。

たとえば試しに書いてみた結果1ページ30分で書けるとわかったら、1日12.1ページだと363分=6.05時間となります。トイレ休憩、ご飯休憩、純粋な休憩など挟むでしょうから、1日に7〜8時間あれば書ける、という算段です。

 

自分が1日に割ける時間を考えてペース配分を

1日7〜8時間で書ける、というのはまあ現実的で無理のない数字です。一人暮らしで気力体力のある人ならば、1日10時間でも書けるでしょう。

でも、ある程度家事や育児に時間を割かなければいけない人は、1日10時間書く、というペースだと結構苦しいと思います。家事や育児は細切れに時間をとられるものです。そして、一旦そちらに意識がいってしまうと、集中して書くモードに戻るまでに時間がかかるんですよね。

家事は休憩がてらできるのでまだいいのですが、育児はイレギュラーなので、特に集中するのが難しいでしょう。

1日だけ頑張ればいいのではありません。毎日最低何時間書けるのか、そして何時間なら毎日書いても心身ともに大丈夫かを考えましょう。乱暴なやりかたですが、仕事量が多すぎてダウンする経験を何度かすると、「このラインを越えると自分はヤバい」という限界がわかるようになると思います(笑)。

そうした経験がない、またはそんな経験したくない、という人は、1日2時間でも4時間でも、自分ができそうと思うところから初めてみて、徐々に時間を伸ばしていくといいでしょう。

 

もし、締め切りまでに時間がなさすぎると感じたら

私なら、締め切りに交渉の余地がある場合は、発注者に相談します。締め切り直前に延長を願い出るよりは、取り掛かってすぐに伝えた方がずっと心象はよくなります。

もし交渉の余地がない場合も、自分一人で抱え込んで無理をせずに相談します。締め切りを伸ばせなくても、ページの文字数を減らす、ライターを増やすなど何かできることがあれば、それに越したことはありません。

どちらの場合も、発注者には

  • 原稿の品質を保つためにはもう少し時間が必要そうである
  • 上記の理由(資料探しに時間がかかる、テープ起こしに時間がかかるなど)

を伝えます。原稿の品質を保つために、というところがポイントですかね。筆が遅いだけじゃないのか、と思われないように、物理的に時間が足りないということを発注者が納得できる理由が必要です。

私は出版社の編集者として発注者側の立場も経験しましたが、早めに伝えれば何とでもなります。早めに伝えれば、様々な根回しができるのです。「遅れるかも」「ちょっと締め切り厳しいです」という現状報告だけでもできるとベストですね。

 

終わりが見えれば、あとは積み重ねていくだけ

本を一冊書く時って、初めはすごく果てしない作業のように思えます。私は今までに何十冊も書いてきましたが、今でも書き始めは「こんなにたくさんの原稿を本当に自分は期日内に書き終えられるのだろうか」とか、「3週間後には書き終わっているはずだけど、書き終わっているなんて想像もつかない」なんて思います。

でも、1日に何ページ書けばいいか、というところをざっくり決められたら、あとは1日1日そのノルマを達成していくだけです。毎日のページ数だけ意識していれば、気がついたら一冊分の原稿が書けています。

一度全体(執筆量とそのペース)を見渡しておくと、あとは目の前のこと(1日のノルマ)だけに集中できます。それをさらに「1時間に2ページ書く」という風に細かく設定すれば、自分がやるべきことはどんどん小さく、シンプルになってきます。これなら、簡単にできそうな気がしてきませんか?

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